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【毛孔性苔癬】二の腕・太もものざらつき、ブツブツ

ふと二の腕を触ってみると、、、

『なんかザラザラしとる~~~😨😨😨』

なーんてこと、ありませんか??

洗い足りない?なんて考えて自分でゴシゴシ洗ったりして赤くなっちゃったりしてません??

それ、もしかしたら【毛孔性苔癬】かもしれません。

気にしだすと止まらない肌のざらつき、、、そんな毛孔性苔癬が今回のテーマです!!

【毛孔性苔癬とは】

毛孔性苔癬(もうこうせいたいせん)は『鶏むしの皮』『鳥肌』などと表現されるザラザラ、ボツボツとした症状がメインの疾患です。

成人の40%に認め、なんと最も多い青年期(10代・20代)では50~80%にまでのぼると言われます😮😮

症状は軽いブツブツだけのものから赤みやかゆみなどの辛い症状を伴うものまで様々です💦

 

よくできる場所

  • 二の腕(最も多い)
  • 太もも・おしり
  • 頬(こどもに多い)

症状

毛穴に一致した非常にちいさな(0.5mm未満くらい)ブツブツ・ザラザラがたくさんできます。乾燥しており痒みが出ることもあります。場合によっては炎症によって毛穴に一致した赤みが出ます。

毛孔性苔癬ができやすい原因や体質

遺伝
毛孔性苔癬は遺伝する疾患(常染色体優性遺伝)で、家族にも同様の症状がある、またはあったという方が多いです。

地域差
性別や人種に差はありませんが、乾燥が悪化の原因になりますので寒い地域に住んでいる方が症状は出やすいようです。

肥満
また肥満があると毛孔性苔癬ができやすい傾向にあるようです。

合併症
その他に様々な疾患との関連があると言われますが、中でもアトピー性皮膚炎は特に関連が強そうです。

経過

幼稚園から小学生くらいから出てきて、思春期(10代)に最も悪化します。その後年齢を重ね30代以降は自然に消退することが多いと言われています。
しかしある研究では35%は平均16歳で自然に改善したが、43%は成人後も継続、22%は悪化したという結果もでていて、その症状は意外と続きます(1)

毛孔性苔癬の病理

ダーモスコピーと言われる拡大鏡を用いて皮膚の状態を見ると、表皮に埋もれた小さく縮れた細い毛が確認されます。
病理組織を見ると毛穴が拡大していてそこに角栓がたまり毛穴が塞がっている状態を認めます。毛穴周辺の周辺の皮膚は過角化(皮膚のターンオーバーが早くなっている状態)により分厚くなっていてこれがブツブツの正体でしょう。
ただしこうなる原因や病態は不明で、それゆえ根本的な治療は今のところ確立していません。

間違いやすい疾患

  • ニキビ 一部ニキビのように炎症を伴うことがあり症状が似ています。
  • マラセチア毛包炎 赤みを帯びた小さな発疹がたくさん発生し、よく似ています。
  • アトピー性皮膚炎 乾燥した肌でザラザラした湿疹がよく似ます。合併していることもあります。

【治療】

良性の自然消退するものなので、何となく様子で済ませる事が多い毛孔性苔癬なのですが本人にとっては辛い症状です。

毛孔性苔癬は根本的な治療はなく、あくまで対症療法となります。
優しめの治療で気長に治療するのか、副作用なども受け入れ積極的に治療するのか、といったスタンスや症状の強さで方針が異なります。

①ケラチナミン(尿素クリーム)※保険適応あり

角質を柔らかくして除去しやすくするクリームで保湿効果もあります。

病理からわかるように本質は毛孔にたまった角栓とその周囲の角化が原因です。
乾燥を改善すると同時にこれらを柔らかくし取り除きやすくしてくれます。

尿素クリームは市販でもありますので、症状が軽い場合は市販のものを用いるのも良いでしょう。

②10%サリチル酸ワセリン※保険適応あり


サリチル酸には古い角質を溶かして取り除く作用があります。
また、炎症を抑える働きもあります。

③ケミカルピーリング・イオン導入


クリニックで行う施術です。
ピーリング剤であるサリチル酸マクロゴール(30~40%)で角質を溶かし取り除きます。
塗り薬よりも高濃度でできるのがメリットで、2週間に1回、クリニックでのスペシャルケアとしておすすめです。

炎症を抑えるイオン導入をセットで行うことができますので炎症を伴う、赤みがある方にもgood👍️

ピーリング・イオン導入について詳しくはこちらでチェックしてください。

④レチノイドクリーム外用


トレチノインは他の治療で効果がない場合などで使用されます。

2週間から症状の改善が見込め、4~8週で最大の効果が期待できます。

⑤イソトレチノイン内服


レチノイドは内服も効果が期待でき、他の治療で無効の場合には検討されます。
0.5~1.0mg/kg/日で約6~12ヶ月継続が目安です。
10代の女性で完全に症状が消失した、という報告があります(5)

※レチノイドと毛孔性苔癬
毛孔性苔癬の治療として確立しているわけではありませんが、他の過角化症や単一の研究報告では有効であったとあります。今後この治療に関する検討が更に進むことが期待されます。ただし外用では一部の方に赤みやひりつきなどの副作用が出ること、内服は催奇形性などの副作用があるため注意が必要です。

⑥レーザー治療

BBL
いくつかのレーザー機器は毛孔性苔癬に有効であると報告されていますが、いずれも単独で完全に良くなるほどではありません。

《毛孔性苔癬のレーザー治療》
・クラリティツイン|ロングパルスNd:YAGレーザー
脱毛効果による副次的効果、丘疹・紅斑に対して
・トライビーム|QSNd:YAGレーザー
くすみ、紅斑、丘疹に対して
・Vbeam|ダイレーザー
紅斑に対して

※脱毛とレーザーについて
毛孔性苔癬の症状改善を期待して脱毛を行うことはあります。
どこまで関連しているか不明ですが、少なくとも毛孔性苔癬の症状がある部位を剃毛などすると、炎症を引き起こしてしまうといった問題はあるでしょう。
ですから、特に毛の自己処理をしている場合、私は脱毛をオススメしています。

当院の脱毛について詳しくはこちら

 

【生活習慣で気を付けること】

保湿

角質を滑らかにすることは有用と言われています。尿素クリームによる保湿効果は最大限利用しましょう。

正しい洗浄

ゴシゴシこすり肌を傷つけたり乾燥をさせたりするのは良くないですが、優しく丁寧に洗浄することはおすすめされています。

アミノソープ・スキンピールバーなどのピーリング含有洗浄剤を使用してみる
たまった角質を適切に除去することは症状の改善につながります。
肌を傷つけず過度な角質を取り除くために、ピーリング成分の入った洗浄剤を使用することは治療の補助として有用と思われます。

刺激しない

ひっかいたり、剃毛などで刺激すると炎症を起こしてしまいますので注意しましょう。

湿疹や肥満の改善

アトピーや肥満が症状に関連していると言われています。アトピーの症状があるのであればその治療、肥満に対しては適度な運動や食事制限など行うことは結果的に毛孔性苔癬の症状が出にくくなるかもしれません。

【最後に|あつた皮ふ科美容皮膚科クリニックご案内】

毛孔性苔癬のように良性のものに対しての治療はどこまで行うかは本当に自分次第!!

どこまで気になるのか、どこまで治療したいのか、どこまで頑張るのか、は人それぞれです。

効果のある治療がいくつかあること、それに伴い副作用もあること、きちんと知ってからそれぞれが選択してもらえるといいと思います。

あつた皮ふ科クリニックの保険診療受診、美容カウンセリングはこちら
毛孔性苔癬について更に詳しく知りたい方はこちら



参考文献
(1)Keith B. Pennycook; Tess A. McCready.” keratosis Pilaris”National Library of medicine 2023-6-26 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/books/NBK546708/?utm_source=chatgpt.com#article-23873.s11 2025-6-25
(2)Treatment of keratosis pilaris and its variants: a systematic review.
Maghfour J, Ly S, Haidari W, Taylor SL, Feldman SR.J Dermatolog Treat. 2022 May;33(3):1231-1242. doi: 10.1080/09546634.2020.1818678. Epub 2020 Sep 14.
(3)Long-pulsed 1064-nm Nd:YAG laser significantly improves keratosis pilaris: a randomized, evaluator-blind study.

Saelim P, Pongprutthipan M, Pootongkam S, Jariyasethavong V, Asawanonda P.J Dermatolog Treat. 2013 Aug;24(4):318-22. doi: 10.3109/09546634.2012.660518. Epub 2012 Mar 4.
(4)Treating keratosis pilaris.
Gerbig AW.J Am Acad Dermatol. 2002 Sep;47(3):457. doi: 10.1067/mjd.2002.122733.
(5)A detailed regimen of isotretinoin for the successful treatment of severe keratosis pilaris.
Kirchner A, Hoyer S.Clin Exp Dermatol. 2022 Mar;47(3):619-621. doi: 10.1111/ced.15020. Epub 2021 Dec 16.