アトピー性皮膚炎

新しいアトピー性皮膚炎治療薬 -モイゼルド軟膏-


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コレクチム軟膏が生後6か月から使用可能に!!

● コレクチム軟膏
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬という新しいお薬が2020年1月に承認されました。このお薬は、アトピー性皮膚炎の治療において世界初の塗り薬で、ヤヌスキナーゼをターゲットにしています。ヤヌスキナーゼは、かゆみの悪循環の一部であるシグナル伝達の『JAK/STAT経路』を遮断することで、かゆみや炎症を抑えることができます。また、刺激や副作用が少ないため長期使用が可能です。成人用と小児用の両方があり、生後6か月から使用可能となっています。これにより、生後6か月~2歳のお子さんにもステロイド外用薬以外の選択肢が出来、副作用を軽減できるようになりました。もちろん2歳以上の方も従来通り使用できます。

コレクチム軟膏については、blogにも説明がございます。よろしければこちらをご覧ください。

アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹ができ、よくなったり悪くなったりを繰り返す、慢性的な皮膚炎です。アトピー性皮膚炎の原因は完全には解明されておりません。特徴的な症状を示す方たちに対し基準を作って診断を行っているため、日本と他の国で診断基準や治療のガイドラインが異なっているのが現状です。
近年では、一部の病態が分かりつつあり治療薬の開発も進んできております。塗り薬では、タクロリムスに続き、コレクチム、モイゼルド軟膏が使用可能になり、ステロイドの代替役の選択肢が増えたためステロイドの使用量を減らすことができる方も増えております。特に2歳未満ではこれまで、保湿剤とステロイド外用薬以外の選択肢がなかったのですが、現在では生後6か月からコレクチム軟膏が使用できるようになりステロイドの長期使用を減らす手助けになりました。また重症のアトピー性皮膚炎の方には注射薬のデュピクセント(成人のみ)だけでなくオルミネント(成人のみ)やリンボック(12歳以上)という内服薬が使用可能になり選択肢が広がっております。
①皮膚のバリア機能障害
②免疫・アレルギー障害
③痒みと搔破行動
これら3つが互いに連関して乾燥と湿疹と痒みの悪循環を来たすということが主流の考え方になっております。
そのことを考えながら
①皮膚のバリア障害は、薬を用いて湿疹を治すこと・保湿をすること・掻破しないこと
②免疫・アレルギー障害は、アレルゲン(ダニ、ペット、マラセチア)を避けたり、症状に応じて外用薬・内服薬・光線療法・注射薬で抑える
③痒みは、汗を洗い流したり、内服薬や外用薬を使用する
という指導や治療を行っております。

どんな症状なの?

おもな症状は、湿疹とかゆみです。湿疹は赤みがあったり、じゅくじゅくしたりしています。また湿疹は左右対称にできることが多く、手足の関節の内側や、脇、首、顔では耳の周りやおでこなどに出やすいです。かゆみがあるので、無意識でもひっかくと皮膚炎が悪化してしまいます。引っ搔くことで湿疹が悪化すると更にかゆみが増し、かゆみが気になるあまり、勉強や仕事に支障がでたり、夜に眠れなくなったりします。このような生活の質の低下を断ち切るには、症状に合わせた強さのステロイド薬などを使って、早めにかゆみのコントロールを始めることが大切です。 短期間で繰り返す、場合は下記のタクロリムス軟膏やコレクチム軟膏が湿疹の再発を防ぐ役割を果たしてくれます。

年齢別アトピー性皮膚炎の症状

乳児期

この時期の症状の特徴はジクジクするということです。 額から頭にかけて黄白色のかさぶたがつく乳児脂漏性皮膚炎の症状とともに、頬~耳の前にかけてかさぶたのついた小さい赤いぶつぶつが集まりジクジクとした肌になります。

幼少児期

1才以上になるとジクジクは改善していきますが、目や口の周り、頬が赤くなり、粉がふいたような状態となります。 この時期から全身の乾燥肌が目立ち、硬いブツブツが出てきて鳥肌のような状態となります。 特に肘、膝にガサガサとした皮疹ができやすく、耳たぶが切れるのも特徴です。

思春期、成人期

大人になってからは上半身に発疹ができやすくなります。 より一層乾燥肌が目立ち、皮膚がぶ厚く硬くなります。このような症状は肘、膝、首の他にも体、手足、お尻など様々な場所にできてきます。 また、長年の引っ掻き行為や乾燥のため、皮膚は浅黒く変化したり、逆に白く抜けたりし、ゴワゴワとした肌になってきます。

アレルギーマーチ

「アレルギーマーチ」とは、乳児期には食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の症状が現れ、幼児期、学童期では、ダニや花粉などのアレルギーで気管支喘息やアレルギー性鼻炎の症状が現れるといった具合に、成長にともないアレルギー症状が変化したり増えたりする様子を指します。
近年、皮膚の湿疹病変に食物のたんぱく質が繰り返し触れることで食物アレルギーの発症率を上げることが分かってきました。乳児期の湿疹が食物アレルギーのリスクになるため乳児期の湿疹の治療は、食物アレルギーのリスクを減らすために重要と考えております。

※アトピー性皮膚炎の治療を怠っている方に見られやすい合併症

    1.カポジ水痘様発疹症:
    単純ヘルペスやコクサッキーウイルス、ワクチニアウイルスによる感染症。湿疹などの上に感染し、急速に拡大する。

    2.伝染性膿痂疹(とびひ):

    黄色ブドウ球菌などによる細菌感染症。引っ掻いた部位に感染し、広がる。

    3.伝染性軟属腫(水イボ):

    伝染性軟属腫ウイルスによる皮膚への感染症。引っ掻いた部位に感染し、広がる。

    4.網膜剥離・白内障などの眼科疾患:
    顔の皮膚炎が重症の思春期以降の方に良く起こり、重度の視力障害につながることがある。

※上記のような疾患をできるだけ減らすために、湿疹を治し綺麗な皮膚を保ちましょう。

アトピー性皮膚炎の原因って?

詳しい原因はまだはっきりと分かっていませんが、遺伝的な要因と環境が大きく関連しています。

遺伝的な要因

家族にアトピー性皮膚炎の方がいる場合は、アトピー性皮膚炎になりやすい、ということが言えます。

フィラグリンという遺伝子の変異がアトピー性皮膚炎の発症に関係しているという報告がなされておりますが、日本人ではアトピー性皮膚炎の20%程度の患者さんにみられるとされています。

 

お子さんがアトピー性皮膚炎になるのでは?と不安なお父さんお母さんへ

まだ生まれていないけれど、まだ皮膚炎はないけれど、遺伝的に我が子がアトピー性皮膚炎になりやすいのでは?と心配な方もいらっしゃると思います。
最近の研究で、遺伝的にアトピー性皮膚炎になりやすいと思われる赤ちゃんでも生後直後から保湿剤を毎日塗ることでアトピー性皮膚炎となるのを30%も減らすことができるということがわかりました。
これは、アトピー性皮膚炎は遺伝的に皮膚のバリアが低下していることが一つの原因となっており、それを外から補ってあげることでアトピー性皮膚炎になりにくい状態を作ることができるから、と考えられています。
心配な場合はぜひ早めにご相談ください。

環境要因

遺伝的な体質に加え、アトピー性皮膚炎の発症や重症度に大きく関与するのが環境要因です。遺伝子は変えられませんが、環境因子をできるだけ取り除いてあげることで発症を抑えたり悪化をさせないようにしたりすることができます。

アトピー性皮膚炎を悪化させる代表的なもの
・汗    ・衣類による刺激   ・ストレス   

アレルギーを有する方のみ注意が必要なもの
・ペット(犬、猫)   ・ダニ     
・マラセチア(真菌)  ・花粉

乳幼児で難治性のアトピーの方のみ注意が必要なもの
・食べ物

※悪循環を引き起こすアトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリアが弱い状態にあります。そこに悪化するものが加わると体内に刺激が入り、強くかゆみを伴う皮膚炎(湿疹)ができます。すると湿疹そのものや、引っ掻き行為がさらに皮膚のバリアを壊してしまうため、さらなる湿疹を引き起こす、という悪循環をもたらします。この悪循環を断ち切るためにも早期の治療が重要となります。そして落ち着いた状態では、皮膚のバリアを補う保湿剤の塗布や環境因子の除去が次の悪化の予防となります。

アトピー性皮膚炎かどうか調べてほしい!!

アトピー性皮膚炎かどうか検査で調べることはできません。
アトピーは症状で診断をする疾患です。以下のリンクが参考になります。

アトピー性皮膚炎 Q3 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会) (dermatol.or.jp)

しかし、アレルギーの強さや悪化させる因子を血液検査で大まかに調べることは可能です。 当院では必要に応じて血液検査を実施しています。結果が出たら医師とともに確認し、日常生活での注意点などの指導を行います。

治療 

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外用療法

● ステロイド外用薬
ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の最も一般的な治療法です。 ステロイドは、アトピー性皮膚炎の悪循環を断ち切るのに有効です。悪循環を断ち切るだけで、長期間健康な肌を保つことができる方もたくさんみえます。 ステロイドに は5段階で強さが分かれており、副作用に注意しながら部位や症状によってうまく使い分けて使用していきます。

● タクロリムス軟膏
ステロイド外用薬に代わる新しい薬で、ステロイドとは異なる作用で治療していきます。副作用が少ない点で非常に優れています。塗る量や年齢に制限があるので、実際はステロイドとうまく組み合わせて使用していきます。 0.1%成人用と0.03%小児用がありますが、2歳未満の小児には現時点では使用できません。ただアメリカ皮膚科学会のガイドラインでは2歳未満も、タクロリムスは安全で効果的であるとされており、将来的に日本でも2歳未満に使用可能になるかもしれません。

※ きれいな肌を保つために、プロアクティブ療法  

プロアクティブ(proactive)療法は、繰り返す皮疹がある場合、比較的よくなった状態の時に保湿によるスキンケアに加え、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を定期的に(週2回など)使用して、きれいな状態を維持する治療法です。
アトピー性皮膚炎では炎症が軽快して一見正常に見える皮膚もまだ完全には治っておらず、またすぐに悪化する場合があります。この時期はプロアクティブ療法を行うことによって、次の悪化を予防することができます。

また近年使用可能になったコレクチム軟膏やモイゼルド軟膏を、使用し悪化を予防する方法もあります。

内服療法

● 抗ヒスタミン薬
主にかゆみを抑えるために用いる薬です。 抗ヒスタミン薬は花粉症などで一般的にも馴染みのある薬ですね。アトピー性皮膚炎の治療ではステロイドやタクロリムスなどの外用薬の補助としてすすめられています。

● ステロイド内服
急に悪くなったアトピー性皮膚炎や重症・最重症の場合に用いられることがあります。長期間のステロイド内服には様々な全身性副作用があることから、ステロイド内服薬を長期間使用することはありません。

● シクロスポリン内服
比較的新しい治療法です。塗り薬の治療で効果が不十分で、症状が重い方に用いる治療法です。1日1~2回の内服で、赤ら顔やかゆみに対して投与後の早い段階で効果が実感できます。症状が落ち着いたら3か月程度で他の治療法に戻すか、一定期間休みを設けることで安全に使用できます。

● オルミエント錠
2020年12月からアトピー性皮膚炎への使用が認められた新しいお薬です。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤と呼ばれるお薬で、ヤヌスキナーゼという酵素の働きを遮断し、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。他の治療で効果が不十分であった場合に使用され、1日1回の内服となります。副作用を回避するために事前の検査が必要となります。
12才以上の小児には同じ作用のリンヴォック錠がお使いただけます。

オルミエント、リンヴォックについては、blogにも説明がございます。よろしければこちらをご覧ください。

その他の療法

エキシマ​

● 紫外線療法 紫外線療法は、ほかの治療では不十分な場合や、使用できない場合に用います。アレルギー反応を抑え、かゆみに効果があることが分かっています。

紫外線治療機器はこちら

他にも当院では、できるだけ薬を使わず悪化を防ぐためのスキンケアの正しい方法や日常生活で気を付けていただくことなど、生活指導も随時行っております。

Q&A

Q ステロイドの外用薬は副作用が恐いといわれていますが、どのように使えばよいのでしょうか?
A
ステロイドの外用薬は、効果をもとに5段階に分類されています。医師の正しい診断のもと、症状以上に強いステロイドの塗り薬を使わないようにしましょう。副作用が出ないように使用するには強さだけでなく、使用頻度、期間も重要です。自己判断で使用せず、定期的に受診し、医師や看護師の指導を聞くようにしましょう。
Q かゆみが治まれば、ステロイドの塗り薬をやめてもいいですか?
A
ステロイド外用薬を急にやめると、症状が悪化する場合があります。すぐに薬を中止するのではなく、症状を確認しながら徐々に弱いランクの薬に替え、塗る回数を減らしていきます。そして問題がなければ、薬を中止します。2才以上の方には、ステロイドではないタクロリムス軟膏の外用をすすめることもあります。
Q アトピー性皮膚炎とストレスには関係があるのですか?
A
大人のアトピー性皮膚炎が悪化する原因として、家庭や仕事などの人間関係や、多忙、不安などの心理社会的ストレスが関係していた例は多くあります。
Q アトピー性皮膚炎は完治しますか?
A
子どものアトピー性皮膚炎は成長とともに治ることもありますが、大人のアトピー性皮膚炎は慢性に経過しやすい傾向があるようです。完治を目指すというよりも、湿疹やかゆみのコントロールに重点を置いて、体質とうまく付き合っていくことが大切です。
Q 普段のスキンケアはどうすればよいですか?
A
身体は低刺激の石鹸で軽く洗い、保湿剤は1日朝晩2回を目安に塗ります。汗をかいた場合は、入浴やシャワーはこまめに行い、保湿剤を塗りなおしましょう。

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正しい情報と確かな治療で、患者様の健やかなお肌を守るお手伝いができれば幸いです。
少しでも気になるところがあれば、ぜひ当院までご相談ください。