円形脱毛症

円形脱毛症とは

円形脱毛症

円形脱毛症にはコイン大の脱毛をはじめ、頭部全体や全身までに脱毛範囲が広がるもの、生えぎわが帯のように脱毛するものなどがあります。一度は治っても、再発を繰り返すこともある疾患です。 円形脱毛症は自己免疫疾患のひとつといわれており、リンパ球の攻撃を抑えることで元通りに毛が生えくると言われています。全体の30%~50%では1年以内に自然治癒すると報告があり、特に症状の軽い場合はこの可能性が高くなります。しかし、重症例や蛇行性脱毛症、合併症がある場合などは治りにくくなります。
ただし、どの種類の円形脱毛症でも毛包と呼ばれる毛の根っこの部分は残っているため、常に毛髪が生えてくる可能性はあるのです。円形脱毛症の治療には薬や注射があります。主治医とよく話し合って、治療方針を決めましょう。

円形脱毛症の発症の原因

円形脱毛症の原因についてはさまざまな説がありますが、現在では「髪の毛根組織に対して免疫機能の異常が発生する」という、いわゆる自己免疫疾患とする説が有力です。

免疫機能の異常をもたらす要因には、遺伝的要因が最も大きく関与しており、その他には疲労や感染症などの肉体的および精神的ストレスなどがあります。円形脱毛症患者の40%以上がアトピー素因を持ち、半数以上が本人や家族にアトピー素因が認められています。このように、アトピー素因と円形脱毛症の間には深い関連があるとみられています。
 
★ストレスとの関係
円形脱毛症はストレスが原因という印象がありますが、必ずしも関連があるわけではありません。 一部では疲労や感染症などによるストレスが引き金となっている場合もありますが、原因が全くない場合も多いです。  

女性の円形脱毛症の原因は?

女性の円形脱毛症の原因は?

女性の円形脱毛症の場合も、自己免疫機能の異常が原因といわれています。円形脱毛症を疑われる患者様のなかには、同じく自己免疫機能異常であるエリテマトーデスやシェーグレン症候群、甲状腺疾患が隠れていることがあります。これらの自己免疫疾患は、比較的若い女性に多い疾患ですので、若い女性も脱毛に対して注意が必要だといえます。 円形脱毛症は、年齢や性別に関係なく発症の可能性がある疾患です。頭皮に異変を感じたら、早めに皮膚科医までご相談ください。

円形脱毛症の種類

1.単発型(脱毛箇所が1か所のみ)
2.多発型(脱毛箇所が2か所以上)
3.蛇行型(両側頭部~後頭部の生え際が帯状に脱毛)
4.全頭型(頭全体に脱毛部位が広がっている場合)
5.汎発性脱毛症(頭だけでなく眉毛・まつ毛・体毛なども脱毛がおきる)

一般的に、1→5の順に症状が重く、かつ治療期間が長くなる傾向があります。それぞれの当院における治療方針は後に記載があるので参考にしてください。

円形脱毛症と関連する病気(合併症)

円形脱毛症と関連する病気(合併症)

円形脱毛症の方の中にはアトピー性皮膚炎や甲状腺の病気などが多いと言われています。またエリテマトーデスやシェーグレン症候群など自己免疫疾患が見つかることもあります。

円形脱毛症のその後

全体の30~50%では1年以内に自然治癒するとの報告があり、特に症状の軽い場合はこの可能性が高くなります。しかし、重症例や蛇行性脱毛症、合併症がある場合などでは治りにくくなります。

ただし、どの種類の円形脱毛症でも毛包と呼ばれる毛の根っこの部分は残っているため、常に毛髪が生えてくる可能性はあるのです。

円形脱毛症の治療法

円形脱毛症 分類

脱毛の面積や症状が出てからの期間によって少しずつ治療法が異なります。
1.単発型円形脱毛症 または 2.多発型円形脱毛症の治療:

ステロイドローションや塩化カルプロニウム外用とセファラチン内服(保険適応)を行います。エキシマライトによる紫外線治療やステロイド局所注射(共に保険適応)を併用することもあります。発症してから3カ月以上たって症状が固定している場合や上記の治療に反応しない場合、希望に応じてSADBEやDPCPという薬剤を用いた局所免疫療法を行うこともあります。

3.蛇行型脱毛円形脱毛症の治療:

ステロイドローションや塩化カルプロニウム外用とセファラチン内服、エキシマライトによる紫外線治療を行います。ステロイド局所注射を併用することもありますが、治療に反応しないことも多く、希望に応じて局所免疫療法を行うこともあります。

4.全頭型円形脱毛症 5.汎発型円形脱毛症:

発症して3カ月以内の場合、ステロイド外用、内服またはステロイドパルスという点滴の治療を行うことがあります。難治性の場合、局所免疫療法または15歳以上の方で発症してから半年以上経過し、脱毛面積が50%以上の場合、JAK阻害剤(オルミネント)という内服薬が使用を検討します。12歳以上の方用のJAK阻害剤(リットフーロ)が2023年8月以降に処方できるようになる見込みです。

外用療法

1.ステロイド

カルプロニウム塩化物外用

1日2回患部に塗るだけで、炎症や免疫機能を抑える効果があります。効果が不十分な場合は密封療法というより薬の浸透を高める方法もあります。毛髪回復に一定の効果が見込める一般的な治療法です。副作用として、吹き出物、皮膚の菲薄化(ひはくか)が起こるおそれがあります。これらの副作用は中止するとすみやかに改善します。

2.塩化カルプロニウム

発毛効果の検証が不十分とされていますが、国内で豊富な診療実績があり、血流をよくする育毛剤として発毛効果が認められています。市販の育毛薬にも含まれています。副作用として、発汗、かゆみ、炎症などが起こるおそれがあります。

3.ミノキシジル(内服・外用)

海外で多くの診療実績を持つ薬です。発毛効果が認められており、血管を拡張する効果があります。副作用として、血圧低下、かゆみ、発疹、かぶれなどが起こるおそれがあります。
※保険適応外です。

内服療法

アトピー性皮膚炎などのアトピー素因をもつ、通常型円形脱毛症の場合に用います。

1.セファランチン

錠剤イメージ

アレルギー反応の抑制や血流促進作用などがある治療薬です。脱毛部分を縮小する根拠は薄いといわれていますが、国内の診療実績も多くほかの治療と併用します。副作用として、胃部不快感、食欲不振が起こるおそれがあります。

2.グリチルリチン

炎症やアレルギーを抑える作用のある治療薬です。科学的な検証は十分ではありませんが、国内で多くの診療実績があり、単発型・多発型の治療で使用しています。副作用としては、血圧上昇、腹痛などの報告があります。

3.抗ヒスタミン薬

アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎といった「アトピー素因」を持つ単発型・多発型の患者様に、脱毛範囲縮小の効果が認められています。副作用としては、眠気やだるさなどが起こるおそれがあります。

その他の治療

3.紫外線療法

アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などにも行われる治療法で、紫外線によって免疫反応を抑えます。当院では、エキシマ―システム308とexciplex308という治療器を使用しております。定期的な処置が必要になるため、3台の治療器を用意しており、処置を希望される方の待ち時間を極力減らせるように工夫しております。 狭い範囲や毛髪が一部残っている部位でも照射が可能です。また40%の例に有効との報告がありますが、外用薬や内服薬を併用することで有効率が上がると考えられております。 副作用としては、肌の炎症やかゆみ、色素沈着が生じることがあります。

紫外線治療機器の詳しい説明はこちらから

4.ステロイド局注(注射)

炎症や免疫機能を抑えるステロイドを局所に注射します。比較的脱毛範囲の狭い場合に行います。 高い発毛効果がありますが、注射時には強い痛みをともないます。一般的に小児には行いません。

5.ステロイドパルス療法

ステロイドを3日ほどの短期間のうちに点滴で大量投与します。発症後早期であり、脱毛が急速に進行し、範囲の広い場合に行います。 必要と判断した場合は連携病院へ紹介します。成長障害を起こす可能性があるため小児には行いません。

難治性の円形脱毛症の方へ

症例写真のご紹介

区分 自由診療
治療名 SADBE
治療内容 かぶれを起こす試薬を患部に塗り、難治性の円形脱毛症を改善する治療です。
リスク・副作用 かぶれ・湿疹・水疱・潰瘍・色素沈着
平均的な治療回数 15~30回
平均的な治療費用 82,500~165,000円

局所免疫療法(SADBE、DPCP)

化学試薬のスクアレン酸ジブチルエステル(SADBE)、もしくはジフェニルシクロプロペノン(DPCP)を使い、人工的にかぶれを起こして発毛を促します。薬を塗るだけの痛みのない治療です。年齢を問わず行えますが、 接触性皮膚炎やリンパ節腫脹などを起こすおそれがあります。 有効率が高いため、保険適応外ですが、他の治療で効果が不十分な場合にも推奨されます。海外では日本と保険制度が異なるため第1選択薬としても使われております。

オルミエント

円形脱毛症の発症に関与するサイトカインの働きを抑えるお薬です。2022年に円形脱毛症での保険適応が認められました。 ただし、頭部全体の50%以上の広範囲で脱毛がある方で、過去6か月間、脱毛の改善がなかった方のみ使用が可能です。感染症や消化管先行などの副作用の報告があります。 また服用前にレントゲン検査や採血検査が必要となります。 保険適応のあるお薬ですが高額なお薬となりますので、料金は下記を参照してください。

治療料金

SADBE(自由診療) 1回 5,500円(自費診察料を含む)
ミノキシジル(自由診療) 2.5mg120錠 20,900円
オルミエント(保険) 4mg約1か月 44,270円(3割負担)※下記参照
その他 保険診療

Q&A

Q.円形脱毛症は治りますか?

A.最近、新規の薬剤の認可が相次いでおり、ほとんどの方が治療で治るようになってきております。注意点としては、脱毛の範囲が狭く、症状が出てから、治療までの期間が短いほど早く症状が良くなる傾向があります。反対に、脱毛の面積が広く、症状にあった治療が開始されるまでの期間が長い方が治療期間も長くなる傾向があります。脱毛の範囲が広がる場合は、早めに円形脱毛症の診療を行っている医療機関へ相談していただくのがおすすめです。

Q.円形脱毛症になるのはストレスのためですか?

A.精神的ストレスが引き金となって脱毛が始まる患者様もいらっしゃいますが、たいていはストレスと無関係に脱毛が始まっています。免疫のバランスが変化する感染症が最も多いきっかけではないかと言われております円形脱毛症の頻度は人口の1~2%と推測されています。遺伝的になりやすい素質というのは、存在するようです。

Q.円形脱毛症に漢方の効果はありますか?

A.漢方で円形脱毛症が改善されたという報告もあるようですが、科学的な検証が不十分なため、医学的に根拠のある治療法をご提案しています。

Q.ステロイド治療に副作用はありますか?

A.外用薬として使用した場合、比較的起こりやすい副作用は吹き出物や皮膚の菲薄化です。

注射で使用した場合は、皮膚の菲薄化や皮膚の血管拡張が起こるおそれがあります。

Q.シャンプーをすると脱毛が心配なのですが?

A.シャンプーをすると毛を失う心配があるかと思いますが、洗髪の頻度で悪化することはありません。頭皮の状態を健やかに保つことは非常に大切です。通常どおりの洗髪をしても問題ありません。健やかな頭皮を保ちましょう。

Q.かつらの使用は治療に影響しませんか?

A.かつらを使うと蒸れて治療に悪影響が出るかもしれない、と心配される方もいらっしゃいますが、問題はないのでご安心ください。かつらはQOL(生活の質)の向上に役立つアイテムです。

お気軽にお問い合わせください

正しい情報と確かな治療で、患者様の健やかなお肌を守るお手伝いができれば幸いです。
少しでも気になるところがあれば、ぜひ当院までご相談ください。