アトピー性皮膚炎とは
アトピー性皮膚炎でお悩みの方は
当院で適切な治療をご提案いたします
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が繰り返し現れる慢性の皮膚疾患です。主な症状は、湿疹や乾燥、かゆみで、特に顔、首、肘や膝の内側に現れます。 当院では、アトピー性皮膚炎の治療として、外用療法(ステロイド薬や非ステロイド薬)、内服薬、紫外線療法などを行っています。軽症の場合はステロイド外用薬や保湿剤で対応し、中等症以上では、外用薬のほか、シクロスポリンやデュピクセントなどの注射薬、さらに紫外線療法を使用することがあります。 名古屋市で繰り返すアトピー性皮膚炎でお悩みの方は、一度当院までご相談ください。
アトピー性皮膚炎の原因
遺伝的な要因
アトピー性皮膚炎の原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境が大きく関連しているとされています。家族にアトピー性皮膚炎の患者がいる場合、発症しやすくなる傾向があります。また、フィラグリンという遺伝子の変異がアトピー性皮膚炎の発症に関係していることが報告されており、日本人の約20%の患者に見られるとされています。
お子さんがアトピー性皮膚炎になるのでは?と不安なお父さんお母さんへ
まだ生まれていないけれど、まだ皮膚炎はないけれど、遺伝的に我が子がアトピー性皮膚炎になりやすいのでは?と心配な方もいらっしゃると思います。 確かに、アトピー性皮膚炎は遺伝的な背景が関係していることも多いですが、必ずしも、ご両親がアトピー性皮膚炎だからお子さんもアトピー性皮膚炎になるというわけでもありません。 生後間もない時期からの保湿がアトピー性皮膚炎の発症を減らすという研究結果が 発表されたこともありますが、現在では賛否両論ありアレルギーの予防には効果を認めるが、アトピー性皮膚炎の予防につながるかは不明とされています。 ご心配な場合はぜひ早めにご相談ください。
環境要因
アトピー性皮膚炎の発症や重症度には、遺伝的体質に加えて環境要因が大きく関与しています。遺伝子は変えられませんが、環境因子を取り除くことで発症を抑えたり、悪化を防いだりすることが可能です。 アトピー性皮膚炎を悪化させる代表的な要因は、汗、衣類による刺激、ストレスです。また、アレルギーを持つ人にはペット(犬、猫)、ダニ、マラセチア(真菌)、花粉なども注意が必要です。乳幼児で難治性のアトピーがある場合は、食べ物にも注意が必要です。
悪循環を引き起こすアトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリアが弱い状態にあります。そこに悪化するものが加わると体内に刺激が入り、強くかゆみを伴う皮膚炎(湿疹)ができます。すると湿疹そのものや、引っ掻き行為がさらに皮膚のバリアを壊してしまうため、さらなる湿疹を引き起こす、という悪循環をもたらします。この悪循環を断ち切るためにも早期の治療が重要となります。そして落ち着いた状態では、皮膚のバリアを補う保湿剤の塗布や環境因子の除去が次の悪化の予防となります。
当院のアトピー性皮膚炎治療
アトピー性皮膚炎の治療は外用療法が基本で、状況に応じて内服療法、紫外線療法、注射薬も使用されます。 軽症で季節ごとに悪化する程度の場合は、悪化する時期のみにステロイド外用や保湿剤で治療し痒みや湿疹を抑えます。 軽症~中等症で湿疹が一年を通して繰り返す場合は、ステロイド外用で症状を軽減させ、保湿剤で予防します。必要に応じて、プロアクティブ療法としてコレクチム軟膏・ブイタマークリームとステロイドを組み合わせて維持治療を行います。 中等症~重症の方には、デュピクセント、アドトラーザ、ミチーガという注射薬の中から適した薬剤を使用することをお勧めしております。注射薬を希望されない方は、年齢に応じて、紫外線療法(ナローバンドUVBやエキシマライト)や内服薬(シクロスポリン、オルミネント、リンボック)を処方させていただくこともあります。
外用療法
ステロイド
ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の最も一般的な治療法です。 ステロイドは、アトピー性皮膚炎の悪循環を断ち切るのに有効です。悪循環を断ち切るだけで、長期間健康な肌を保つことができる方もたくさんみえます。 ステロイドに は5段階で強さが分かれており、副作用に注意しながら部位や症状によってうまく使い分けて使用していきます。
ブイタマークリーム(非ステロイド)
ブイタマー(一般名:タピナロフ)は「AhR調整薬」と呼ばれる種類の薬剤で、2024年10月から処方可能となりました。今までに無かった、全く新しいタイプの外用薬です。
皮膚の細胞内にある芳香族炭化水素受容体(AhR)にタピナロフがくっつくことにより受容体を活性化させ、さまざまな遺伝子・タンパク質の発現を調整し、皮膚の炎症を抑えたり、バリア機能を回復させる作用を引き起こします。成人及び12歳以上の小児のアトピー性皮膚炎、成人の尋常性乾癬の治療に使用します。
また発売されて間もないため、まだどのような位置づけになるかはこれから変わる可能性はありますが、アトピー性皮膚炎の外用薬としてはプロアクティブ療法の薬剤の一つとして使用される機会が多くなりそうです。
タクロリムス軟膏(非ステロイド)
ステロイド外用薬に代わる新しい薬で、ステロイドとは異なる作用で治療していきます。ブイタマークリーム、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏に比べて炎症を抑える効果が高いです。顔の赤みや痒みにも効果を発揮することが多い一方で、副作用として「ほてり感」「ヒリヒリ感」「痒み」が出てしまう方も一定数いらっしゃいます。使用する際は、コツや注意点がありますので診察の際に用紙を用いて詳しく説明をしております。
0.1%成人用と0.03%小児用がありますが、2歳未満の小児には現時点では使用できません。
コレクチム軟膏
ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬という新しいお薬が2020年1月に承認されました。このお薬は、アトピー性皮膚炎の治療において世界初の塗り薬で、ヤヌスキナーゼをターゲットにしています。ヤヌスキナーゼは、かゆみの悪循環の一部であるシグナル伝達の『JAK/STAT経路』を遮断することで、かゆみや炎症を抑えることができます。また、刺激や副作用が少ないため長期使用が可能です。成人用と小児用の両方があり、生後6か月から使用可能となっています。これにより、生後6か月~2歳のお子さんにもステロイド外用薬以外の選択肢が出来、副作用を軽減できるようになりました。もちろん2歳以上の方も従来通り使用できます。
モイゼルト軟膏
2022年から新たなアトピー性皮膚炎の治療薬としてモイゼルド軟膏(PDE-4阻害剤)が処方可能になりました。以前から尋常性乾癬の治療薬として内服薬の「オテズラ錠」が使用されてきましたが、安全性が高い外用薬としてもモイゼルド軟膏が使えるようになりました。ステロイド外用後に、良い状態を維持するために以前から使用されていたタクロリムス軟膏と比べて、コレクチム軟膏やモイゼルド軟膏は刺激感が少なく、令和5年12月から生後3か月の赤ちゃんからモイゼルト軟膏の使用が可能になり、アトピー性皮膚炎の悪化を防ぐ対策がしやすくなりました。
注射薬
外用治療で効果が不十分な場合、従来は抗ヒスタミン薬やシクロスポリンが使用されていましたが、抗ヒスタミン薬は効果が薄く、シクロスポリンには免疫抑制や腎障害のリスクがありました。最近では、副作用が少ないデュピクセントという注射薬が成人に広く使われており、2023年9月末からは生後6か月の乳児にも使用可能となりました。これにより、外用薬でかゆみが改善しない幼児や小学生にも新たな治療選択肢が提供されています。
デュピクセント
デュピクセントは、アトピー性皮膚炎の痒みや赤みを軽減する世界初のヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体(生物学的製剤)です。シクロスポリンより有効率が高く、副作用の懸念も少ないため、外用治療が不十分な場合の第1選択薬となります。主な副作用は注射部位の紅斑、反応、結膜炎で、免疫抑制作用のあるシクロスポリンやJAK阻害剤と比べて安全性が高いとされています。 デュピクセントは生後6ヶ月以上から使用可能で、成人には初回600mgを皮下注射し、その後は300mgを2週間ごとに皮下注射します。初めの2回はクリニックで使用方法を指導し、その後は自宅で注射を行い、1ヶ月おきに診察を受ける形になります。詳細な使用方法は診察時に説明されます。
アドトラーザ
アドトラーザは、デュピクセントと類似の作用がある注射薬です。成人の方のみにしか使用できませんが、結膜炎の副作用がデュピクセントより頻度が少ないのが特徴です。また他の薬剤で顔の湿疹が抑えられなかった場合にも効果を発揮することがあります。 初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で自宅で注射を行います。
ミチーガ
ミチーガは、アトピー性皮膚炎で痒みのコントロールが難しい13歳以上の方に使用できます。痒みに対する効果が高い反面、湿疹を抑える効果は低いので、外用治療は従来通り継続する必要があります。 1回60mgを4週間の間隔で自宅で注射を行います。
内服療法
抗ヒスタミン
主にかゆみを抑えるために用いる薬です。 抗ヒスタミン薬は花粉症などで一般的にも馴染みのある薬ですね。アトピー性皮膚炎の治療ではステロイドやタクロリムスなどの外用薬の補助としてすすめられています。
ステロイド
急に悪くなったアトピー性皮膚炎や重症・最重症の場合に用いられることがあります。長期間のステロイド内服には様々な全身性副作用があることから、ステロイド内服薬を長期間使用することはありません。
シクロスポリン
比較的新しい治療法です。塗り薬の治療で効果が不十分で、症状が重い方に用いる治療法です。1日1回起床後の空腹時に内服をします。赤ら顔やかゆみに対して投与後1~2週間程度の早い段階で効果が実感できます。1~2週間程度で症状が改善しない場合は、内服量を増量することもあります。内服開始前と内服開始後3か月に1回程度血液検査が必要です。シクロスポリンを内服し、改善と再燃を何度も繰り返す場合は、下記の内服薬や注射薬に変更を検討します。
オルミエント・リンヴォック
2020年12月からアトピー性皮膚炎への使用が認められた新しいお薬です。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤と呼ばれるお薬で、ヤヌスキナーゼという酵素の働きを遮断し、かゆみや皮膚の炎症を抑えます。他の治療で効果が不十分であった場合に使用され、1日1回の内服となります。副作用を回避するために事前の検査が必要となります。 12才以上の小児には同じ作用のリンヴォック錠がお使いただけます。
その他の治療法
紫外線療法(エキシマ)
紫外線療法は、ほかの治療では不十分な場合や、内服薬などが使用できない場合に用います。アレルギー反応を抑え、かゆみに効果があることが分かっています。
医療脱毛
当院ではアトピー性皮膚炎の方にも医療脱毛を提供しています。一般的にアトピー肌には刺激を避けるべきですが、皮膚科専門医が状態を見極め、ご希望があれば施術を行います。アトピーの悪化因子の一つは肌への刺激ですが、ヒゲなど頻繁な自己処理が必要な場合、永久脱毛を行うことでアトピーのコントロールがしやすくなることが期待できます。アトピー肌の方には色素沈着が見られることが多いため、アレキサンドライトレーザーが使用できない場合がありますが、当院のYAGレーザーを使用することで問題なく脱毛が可能です。
よくあるご質問
アトピー性皮膚炎かどうか調べられますか?
アトピー性皮膚炎かどうか検査で調べることはできません。 アトピーは症状で診断をする疾患です。以下のリンクが参考になります。 アトピー性皮膚炎 Q3 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会) (dermatol.or.jp) しかし、アレルギーの強さや悪化させる因子を血液検査で大まかに調べることは可能です。 当院では必要に応じて血液検査を実施しています。結果が出たら医師とともに確認し、日常生活での注意点などの指導を行います。
ステロイドの外用薬は副作用が恐いといわれていますが、どのように使えばよいのでしょうか?
ステロイドの外用薬は、効果をもとに5段階に分類されています。医師の正しい診断のもと、症状以上に強いステロイドの塗り薬を使わないようにしましょう。副作用が出ないように使用するには強さだけでなく、使用頻度、期間も重要です。自己判断で使用せず、定期的に受診し、医師や看護師の指導を聞くようにしましょう。
かゆみが治まれば、ステロイドの塗り薬をやめてもいいですか?
ステロイド外用薬を急にやめると、症状が悪化する場合があります。すぐに薬を中止するのではなく、症状を確認しながら徐々に弱いランクの薬に替え、塗る回数を減らしていきます。そして問題がなければ、薬を中止します。またステロイド以外の外用薬(タクロリムス軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏、ブイタマークリーム)などに切り替えることも推奨いたします。
アトピー性皮膚炎とストレスには関係があるのですか?
アトピー性皮膚炎でなくともイライラすると体が痒くなることがあります。アトピー性皮膚炎でも、保育園入園時、受験前、家庭や仕事などの人間関係や、多忙、不安などの心理社会的ストレスにより痒みや湿疹が悪化することが良くあります。ストレスを減らすことも大事ですが、難しいことも多く外用薬・内服薬・注射薬の治療を変更することでアトピー性皮膚炎の症状を軽くすることもできます。
アトピー性皮膚炎は完治しますか?
幼児期に発症したアトピー性皮膚炎は、成長に伴って多くの場合、思春期~成人になる頃までに自然軽快していくことが多く見られます。一方で成人期に発症したアトピー性皮膚炎は慢性化しやすく、いわゆる「完治」と呼べる状態まで至ることは困難な傾向がありますが、適切な治療や生活習慣の改善により症状のコントロールは十分可能であり、40~50代以降に軽快し治療が定期的な通院が不要になるケースも少なくありません。
普段のスキンケアはどうすればよいですか?
身体は低刺激の石鹸で軽く洗い、保湿剤は1日朝晩2回を目安に塗ります。汗をかいた場合は、入浴やシャワーはこまめに行い、保湿剤を塗りなおしましょう。
アトピー性皮膚炎は違う病気にかかることはありますか?
アトピー性皮膚炎の治療を怠ると、カポジ水痘様発疹症、伝染性膿痂疹(とびひ)、伝染性軟属腫(水イボ)、網膜剥離、白内障などの眼科疾患といった合併症が見られやすくなります。これらの疾患を減らすためには、発疹を早期に治療し、綺麗な皮膚を保つことが重要です。
アレルギーマーチとはなんですか?
成長に伴いアレルギーやアトピー性皮膚炎の症状が変化することを「アレルギーマーチ」といいます。 乳児期には食物アレルギーなどの症状が現れ、幼児期、学童期ではダニや花粉などのアレルギーで気管支喘息やアレルギー性鼻炎の症状が現れるといったように、成長とともに症状が変化したり増えたりすることがあります。
成長すると症状は変わりますか?
乳児期から3才を過ぎる時点で症状は軽くなる事がありますが、1部の方は継続して症状が出ることがあります。
監修医情報
理事長・院長 佐々木良輔
略歴
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2006年
浜松医科大学 卒業
徳州会病院で救急・総合診療研修 -
2008年~2010年
藤田保健衛生大学皮膚科学 助教
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2010年~2011年
大同病院皮膚科 勤務
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2011年~2013年
藤田保健衛生大学皮膚科学 助教
-
2013年~2015年
刈谷豊田総合病院 皮膚科 勤務
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2015年~
藤田保健衛生大学皮膚科学 客員助教
あつた皮ふ科・美容皮膚科クリニック(旧:あつた皮ふ科クリニック)院長
資格・所属学会
- (一社)日本専門医機構認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会 中部支部代議員(2016年~2023年)
- 日本皮膚科学会 東海地方会評議員(2016年~2022年)
- 藤田医科大学皮膚科学 客員助教