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アトピー性皮膚炎にステロイドではない塗り薬《モイゼルト軟膏》効果や副作用を解説

アトピー性皮膚炎のかゆみや肌荒れは辛いですよね。
でも丁寧に治療すれば、その症状サヨナラできるかも!?

現段階でアトピー性皮膚炎の完治は困難で、症状を抑えうまく付き合っていく、というのが治療になります。
とはいえ、近年は新しい治療薬が続々と登場!
ほとんど日常生活に支障がない状態でコントロールできている方もたくさんいらっしゃいます。
そんなアトピー性皮膚炎の治療薬の1つ、『モイゼルト軟膏』についてご紹介します💡

※ほかにもたくさんのお薬がでています。
それぞれ特徴があり、これらを駆使することで多くの場合で症状を抑えることができます。
その他のアトピー性皮膚炎の治療の紹介はこちら

モイゼルト軟膏とは?

  有効成分「ジファミラスト」とは?

モイゼルト軟膏の主成分ジファミラストはホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤というものでステロイドとは異なる作用で炎症を抑えるお薬です。
このPDE4阻害剤はこれまでもオテズラという飲み薬で炎症性サイトカイン(炎症を起こす物質)が原因となる乾癬(かんせん)という病気に使用されていました。
PDE4阻害剤の皮膚浸透性などを良くして塗り薬として利用できるよう改良したのがジファミラストです。

「ジファミラスト」PDE4阻害剤の働き



PDE4は様々な炎症系の細胞にあり、この働きによって(間にもろもろあって)炎症が起こります。
アトピー性皮膚炎の皮膚における炎症は免疫系の異常、つまり必要ない炎症です。PDE4の働きを抑えることで余計な炎症が収まり、皮膚が荒れたり、痒みが出るのを抑えることができます。

適応:モイゼルト軟膏がおすすめの方

適応年齢

モイゼルト軟膏はアトピー性皮膚炎の非ステロイド系治療薬の中で最も生後早くから使用できます


・生後3ヶ月~14歳 0.3%または1%
・15歳以上 1%

0.3%は主に赤ちゃんから小児に使用します。症状によって小児でも1%を用いることがありますが、症状が改善した場合は0.3%に積極的に変更したりします。

※生後早期からの治療に力を入れる理由『アレルギーマーチ』とは?
1つのアレルギー疾患がきっかけとなり、次々と他のアレルギー疾患が発症するという現象をアレルギーマーチといいます。
通常、一番早く発症するアレルギー疾患はアトピー性皮膚炎。
その後食物アレルギーや喘息などが続いて発症
することが多くあります。

一見関係がないように見えるこれらの疾患ですが、実は1歳までにアトピー等による湿疹があった場合、なかった場合の4倍も食物アレルギーが発症しやすく、その中でも特に生後4ヶ月未満の赤ちゃんで湿疹があった子は発症率が高かった事がわかっています。
このことから、できるだけ生後早期に治療により湿疹をケアしてあげることが、その後の他のアレルギー疾患発症の確率を下げることができるのではないか、と考えられています。


※非ステロイド系塗り薬の適応開始年齢
モイゼルト軟膏0.3% 3ヶ月~
コレクチム軟膏0.25% 6ヶ月~

プロトピック軟膏0.03% 2歳~
ブイタマークリーム 12歳~

適応のない方

これまでに同様の成分でアレルギー反応があった方
妊婦・授乳婦

モイゼルト軟膏がおすすめの症状

アトピー性皮膚炎で湿疹などの症状が、軽微または軽症の方向けとなります。
アトピー性皮膚炎が重症と判断される場合は、他剤を使用した上で症状が改善してきた場合に切り替える、という方法で使用されることがあります。

使用方法と注意点


塗り方のポイント

1日2回塗ります。
アトピー性皮膚炎の塗り薬は
適正量、適正な範囲、適正な期間塗るのが大切です。

特に湿疹を繰り返す場合、これが十分ではないことが多いです。


指の第一関節ぶんだけチューブで出した量で手のひら2枚分が適正量です!

これ、すっごくわかりやすいのでぜひ参考にしてくださいね。

塗ったあとは、しっとり、ティッシュが張り付くくらいが目安です。
意識していないと、ついついベタつきが気になったり、勿体ないなんて思ってうすーく広げてしまいがち😓
気をつけましょう。

範囲
塗る範囲は見た目で湿疹とわかる範囲だけでなく、触って少しゴワゴワしている、ちょっと怪しいな、という部分まで塗るのがポイントです。

期間
また、医師に言われた期間はしっかり塗るようにしましょう。
湿疹が良くなったな、と自己判断で塗り薬をやめてしまうと、実はまだ炎症が潜んでいてすぐに出てきてしまう事があるからです。

使用できる部位

粘膜、皮膚に大きな傷がある場合、皮膚感染症がある部位以外は使用できます。
顔はもちろん、まぶたなどにも使用できますよ!(目に入らないように注意しましょう)

副作用


安全性を確認するための臨床試験において、モイゼルト軟膏を52週外用継続し、重篤な副作用は見られなかったという結果が出ました。
モイゼルト軟膏は長期にわたって使用しても安全性が高いお薬と言えます。

《主な副作用》
膿 痂 疹( と び ひ )
ざ瘡(にきび)
赤み ・刺激感
接触皮膚炎(かぶれ)など。

他の治療薬との違い


ステロイド外用薬との違い

ステロイド外用薬は即効性があり効果は優れています。
一方で長期使用すると皮膚萎縮や毛細血管拡張症(酒さ様皮膚炎)などのトラブルが懸念されることがあります。特に顔は漫然と使い続けることは推奨されません。
その点、モイゼルト軟膏は副作用が少なく安全なため、顔に長期使用する場合はモイゼルト軟膏に切り替えるなどうまく使い分けます。

プロトピック軟膏との比較

プロトピック軟膏も効果の点では比較的高いと言えます。
しかし使用開始時ピリピリとした刺激感が問題となり使用できない方もいらっしゃいました。
一方モイゼルト軟膏は一部副作用に刺激感があるものの、頻度は少なくプロトピックよりも使用しやすいです。
また、ステロイド同様に酒さ様皮膚炎の原因になることがありますので、長期使用になる場合はモイゼルト軟膏の方がリスクが少ないと言えます

デュピクセントやイブグリース(注射薬)との関係

全身治療の代表となる注射薬のデュピクセント(ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体)やイブグリース(抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤)は外用薬のみの治療よりも高い効果が期待できます。
しかし、全身投与に伴う副作用などは注意が必要です。また、どちらの薬剤も高価な薬剤になります。
このことから、デュピクセントやイブグリースは寛解導入(症状がある程度良くなり安定した状態)になるまで使用、というのが望ましいでしょう。
これらのお薬には一般的に外用薬も併用しますから併用薬としてもモイゼルト軟膏使用も良い選択です。また寛解導入後の長期コントロールではモイゼルト軟膏などの副作用が少ない塗り薬が推奨されます。

紫外線療法(ナローバンドUVB及びエキシマライト)との関係

紫外線には皮膚の免疫に関する細胞の働きを抑える効果があります。

他の治療で効果が不十分な中等症以上の場合や、内服・注射薬などの全身療法が難しい場合に外用療法と併用して行います。
通院が必要なので、症状が安定したら外用療法(モイゼルト軟膏も含む)のみに切り替える方が多いです。
※ナローバンドUVBを使用する紫外線療法は発がんリスクや副作用なども少ないため比較的安全です。より広範囲に照射したい場合に用います。
またエキシマライトは健常部位には当たらないよう細かい操作が可能で、かつ、照射エネルギーを高強度で当てることができます。狭い範囲に当てたい、ナローバンドで効果が不十分だった方に有用です

よくある質問

Q1. モイゼルト軟膏は顔にも毎日塗って大丈夫ですか?
A. はい、顔に安全に使用できる薬剤です。基本的には1日2回、医師に指示された期間塗りましょう。目には入らないように注意して塗りましょう。

Q2. モイゼルト軟膏はステロイドの代わりになりますか?
A. ステロイドとは異なる作用機序ですがステロイド同様、炎症を抑えるお薬です。ただし効果の出方や強さは異なりますので、症状に合わせた薬剤選択が必要になります。
処方例:症状が強いときはステロイド外用薬で治療を開始、症状が改善してきたらモイゼルト軟膏に部分的に移行、軽症になったらモイゼルト軟膏に切り替える。

Q3. 塗っても症状が消えないのですが、効いていないのでしょうか?
A. 即効性のある薬ではありません。多くは1週間~1ヶ月程度で効果を実感し始めるかたが多いです。継続して使用することが大切です。
症状が辛い部位は最初はステロイド剤を使用するのが良いでしょう。状態が安定したらモイゼルト軟膏への切り替えを検討します。

Q4.赤みが出たのですが、使用をやめた方が良いですか?
A. 副作用の可能性があります。一旦使用を中止し早めにかかりつけの医師に相談しましょう。

Q5. 他の薬と併用できますか?
A.保湿剤はよく併用されます。保湿剤を塗ってからモイゼルト軟膏を塗るのが塗りやすいです。
内服薬(経口ステロイド薬等)や生物学的製剤、光線療法との併用については特に制限はありません。実際の症状に合わせて適宜使用するとよいでしょう。
他の抗炎症外用薬との併用も特に制限はありません。ただし安全のためどの製剤と併用の場合も医師にご相談ください。

最後に:あつた皮ふ科美容皮膚科クリニックのご案内


アトピー性皮膚炎の治療は多くの治療薬があり、コントロールが可能な疾患となりつつあります。
それには適切な薬剤選択や正しい外用方法が不可欠です。

あつた皮ふ科美容皮膚科クリニックでは必要に応じてパンフレットなどを用いてお薬の案内をしたり実演しながら外用の仕方を丁寧に説明したりしています。

アトピー性皮膚炎でお困りの方はぜひご相談ください。
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アトピー性皮膚炎についてもっと詳しく知りたい方はこちら



参考文献
1.大塚製薬”モイゼルト軟膏0.3%、1%”大塚製薬eライブラリ2024/10
https://www.otsuka-elibrary.jp/product/di/mz1/index.html(2025/7/8)
2.サノフィ”デュピクセント”デュピクセントを使用される患者さんへ2025/4/1
https://www.support-allergy.com/atopy/dupixent/pt_moa(2025/7/8)
3.日本皮膚科学会”アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024″chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf(2025/7/9)
4.アブソルート”紫外線治療機器エキシプレックス308″製品情報https://www.absolute.co.jp/products/exciplex308/(2025/7/10)